こんにちは、元公務員人事のしょうです。
今回はこういった方のために、元公務員人事の僕が、人事異動がどのようにして決まるのか、人事は職員の異動希望などを考慮しているのか、といったことについて解説します!
※政令市で事務職の人事異動を組んでいた経験をもとにお話ししますので、自治体の規模や職種によっては一部異なる内容があるかもしれませんので、ご了承ください。
それでは、見ていきましょう!
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もくじ
公務員の人事異動が多い理由
役所はとにかく人事異動が多いです。
多くの自治体では、2年から5年ぐらいを目途に人事異動があります。
特に地方公務員は仕事の幅が大きいので、例えば3年間福祉関係の仕事をしていた人が、急に人事の仕事をしたり、あるいは税金の仕事をしたりと、まるで定期的に転職するかのように仕事内容が変わっていきます。
異動のたびに新しく仕事を覚えないといけないので、一見非効率に思えますが、なぜこのように人事異動が頻繁に行われるのでしょう。
それには、以下のような理由があります。
・特定の企業や団体等との癒着といった不正の防止
・職員の能力開発
・組織の活性化
1つ目が公務員ならではの理由で、役所というところは「公平・公正」が求められるところですので、不正や犯罪などは絶対にあってはなりません。
職員が何年も何十年も同じ仕事をしていると、普段やり取りしている業者や関係者と仲良くなって、教えてはいけない情報を教えてしまったりと、不正が起こりやすくなるのです。
また、公務員は身分保障が強い(強すぎる)ことや、年功序列の風土があることから、同じ組織で同じメンバーで仕事をしていると、皆どんどん手を抜くことを考え始めたり、組織においても変革は生まれなくなります。
よって、人事異動により職員に定期的に新しい仕事をしてもらったり、組織に定期的に新しい風を送り込む必要があるのです。
人事異動は誰が決めているのか
人事異動は人事担当部署が決めています。
そしてその決め方というのは、各職層ごとに上から順に決めていきます。
どういうことかと言うと、
・部長級の異動は人事部長が
・課長級の異動は人事課長が
・係長級の異動は人事係長が
・一般職員の異動は人事担当者が
それぞれ案を作るイメージです。
※自治体によっては、1つ上の職層の人が異動を決める場合もあるようです。
(例)人事部長が課長級の異動を検討する
そして、それぞれが異動案を作成したら、上の職層から順番に市長や副市長に諮りながら異動内容を固めていくわけです。
なので僕が人事担当者の時は、自分の中で案はできているのに、係長以上の異動がなかなか固まらず、異動日直前まで案が確定せずにヤキモキした経験があります(笑)
人事異動の決め方
ここからは、人事がどのようにして異動を決めていくのか、順を追って見ていきましょう。
定数(各職場ごとの職員数)を決定する
まずは、「定数」と呼ばれる、各職場ごとの職員数を決めるところからです。
どういうことかと言うと、職員の数は常に一定ではなくて、その年度ごとの組織や仕事の状況に応じて、人を増やしたり減らしたりしています。
例えば、その自治体で生活保護受給者が増えてきたら生保ケースワーカーを増やす必要があったり、力を入れていた事業が縮小傾向にあるならその職場の職員数を1人減らしたりと、全体のバランスを見ながら人事が調整をかけるわけです。
各職場の状況を確認する
人事は各職場の人事労務を統括する人から、各職場の状況を聞き取ります。
政令市の場合は、「局」という大きな組織の単位がありましたので、各局総務課の人事労務の担当者から、その局の各部署の状況を確認していました。
例えば、「A課には育児配慮で残業できない人が集まりすぎているな」とか、「B課は市長が力を入れている分野なので、少しテコ入れした方がいいな」みたいなことですね。
全職員の異動/残留を確定させる
こちらも人事が、各所属の人事労務を統括する立場の人から意見を聞きながら、各職員の異動/残留を決めていきます。
イメージとしては、「○○さんは異動年限が来たので異動」「1年目の○○さんは順調に仕事を覚えてもらっているので残留」「○○さんは異動年限前だけど、ご家庭の事情もあるし異動」といった感じで、1人ずつ検討します。
これで「異動する人」と「残留する人」が決まるわけですね。
後任者のイメージを確認する
上で全職員の異動/残留が決まりましたので、異動者の後任イメージを確認します。
例えば「異動する○○さんは課の大黒柱だったので、同じようにエース級の職員が欲しい」「選挙の時に公用車で投票箱を運んでもらう必要があるので、運転できる人で」「定時後に金庫を閉める仕事があるので、時短勤務の人は難しい」といった感じですね。
こうして、まずは組織側の事情を確認したうえで、異動案の検討に移ります。
異動対象者の異動先を考える
最後は、異動対象者の行き先を考えていきます。
それぞれの異動対象者について、その人の適正、経験、健康状況、家庭の事情、本人の希望などを加味して、上で聞き取った各所属の要望とマッチする部署を探します。
このようにして、人事異動は決まっていきます。
(規模の大きい自治体だと職員数が1万人ぐらいいて、人事課にいる数人で全職員の異動について考えるわけですから、人事がなぜ異様に忙しいのか分かってもらえるかと思います…)
なぜ異動希望は通らないのか
人事は職員の異動希望なんて見てないに違いない!
役所にいると、こういった意見がよく聞かれます。
もちろん人事は職員の異動希望も入念に確認していますし、実際に希望通りの部署に配属される人がいるのも事実。
それでは、どうすれば希望が通りやすくなるのか。
先ほどの異動が決まるまでの流れを知れば分かりやすいと思いますが、「希望する部署ではどのような人材が求められているか」を考えて、希望を伝えるべきです。
例えば、観光系の部署が後任者の希望として「英語が喋れる人」をマストの条件としていた場合、英語を喋れない人がどれだけ熱く観光への想いを伝えたとしても、そのマッチングは永遠に成立しません。
一方で、そのような組織側の需要を的確に把握し、「観光系の部署に行きたいので、週に3回、英会話のレッスンに通っています。そしてこの2年でTOEICの点数も600点から800点まで上がりました」とアピールすれば、部署としてもそんな人に来てほしいですし、人事としても「これだけ努力してるんだからチャレンジさせたい」と思うものです。
これは実際に僕の後輩が異動希望を実現させた例ですが、自分自身の力で希望する仕事を掴み取り、素直にすごいなと感じました。
ではどのようにして組織側の需要をキャッチするのかというと、実際にその部署にいる人に聞いてみるか、その部署の広報物なんかを確認して、今どのようなことに力を入れているのかを確認するのもいいでしょう。
このように、どうしてもやってみたい仕事があって、その異動希望を叶えるためには、「個人目線」ではなくて「組織目線」で考えるとよいと思います。
注意ポイント
本人の体調や育児配慮などについては、人事としても最優先で考えてくれるので、異動しなければならない事情がある場合は、遠慮なく上司に相談しましょう。
まとめ
今回は役所における人事異動の決まり方について解説しました。
人事異動というのはどうしてもブラックボックスになりがちで、「人事は何も考えてない」とか「人事は人の人生を軽く考えてる」みたいなことを言われることもあるので、そこのミスマッチが少しでも解消できればと思って書きました。
「異動希望を叶えるためには組織目線で考えよう」とは言いましたが、とは言え組織の言いなりになる必要はないので、しんどい時はしんどいと言えばいいし、もっと家庭を重視したい時はそのように伝えたらいいと思います。
僕個人の想いとしては、1人でも多くの公務員が、自分の望む働き方ができることを願っています。
それでは、また。