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公務員試験にコネ採用はあるのか?【元公務員人事が暴露】

2021年5月1日

 

今回は「公務員試験にコネ採用はあるのか?」ということについて、政令市の人事課で採用担当をしていた経験から、事実をありのままに書いていきます。

このことについてはかなり強い思いを持っていますので、いつもと違うテイストになりますがご了承ください。

なるべく誤解を生まないように書こうと思いますので、できれば一部を切り取って読むのではなく、この記事だけは最後まで見ていただると幸いです。

 

結論:コネ採用はないが外圧はある

基本的に公務員の採用については、国家公務員法や地方公務員法において「受験成績その他の能力の実証に基づいて行わなければならない」と定められており、「成績主義」の理念の下、公平かつ公正に試験が行われています。

ですので、ほとんどの採用試験では筆記試験が導入されているように、面接試験も含めてすべて点数化した上で採用/不採用の判断を行うため、そもそも「コネ」というものが介在する余地が極めて少ないです。

 

しかしながら、です。

噂話などで耳にしたことがある方もおられるかもしれませんが、役所に対して力を持っている立場の人間から、いわゆる「口利き」のような外圧があるのも事実です。

それが「議員」や「地元の有力者」といった方々です。

 

「議員」というのは、市であれば市議会議員、県であれば県議会議員、国政であれば国会議員のことを指します。

「地元の有力者」というのは一括りに説明できませんが、経済界の偉い人、○○協会の会長、その地域の不動産界隈を取り仕切っている人、みたいな感じでイメージしてもらえればと思います。

 

これらの人の共通点は、「役所側が異常に気を遣う人たち」ということです。

と言うのも、何か政策を実施する際には、「議員」の賛成が得られないと予算も付けられなかったり、地元でイベントをするにも施設を作るにも「地元の有力者」の了承が得られないと円滑に物事が前に進まなかったりするためです。

こういった「役所に対してものが言える」立場を利用して、あろうことか職員採用にも口を出してくることがあるのです。

  

具体的な内容について

これを具体的にどうやって説明しようかと悩みましたが、つい先日、僕が出身自治体の市議会議員に宛てたメールをコピペしたものを載せます。

※自治体名や氏名は○○の形で伏せています。

○○市議会議員 ○○様

 

日頃より○○市政の発展のためご尽力いただき、誠にありがとうございます。

私はかつて○○市の人事課等で勤務し、現在は退職しております○○と申します。

 

今回は突然のご連絡で大変恐縮ではございますが、「職員採用」に関することで1点お願いがありメールを差し上げました。

お願いというのは、このメール内容を○○市議会議員の全議員に周知いただくことです。

 

まず、釈迦に説法で恐縮ですが、職員採用については地方公務員法において「受験成績その他の能力の実証に基づいて行わなければならない」と定められており、「成績主義」の理念の下、公平かつ公正に行われなければなりません。

しかしながら、複数の市議会議員の行動が、この理念に反していると思われます。

 

私は、○○市の人事課で従事していた際に、職員採用事務を担当しておりました。

その際、何名かの議員から、職員採用に関していわゆる「口利き」のような行為がありました。

一例を挙げますと、ある議員の方から「○○協会の会長のご子息が今年度の○○市の採用試験を受けるようである。私の選挙区での有力な支援者でいらっしゃるので、くれぐれもよろしくお願いしたい。」といった話が、採用試験前に人事課に入るようなことがありました。

 

もちろん、この「よろしくお願いしたい」の意味するところが「優秀な人なので是非とも面接の参考にしてほしい」という○○市を想った善意によるものかもしれませんし、仮に「融通を利かせるように」という悪意によるものだとしても、職員採用は筆記試験等の点数に応じて合否を判断するため、融通を利かせる余地はほとんどありません。

 

しかしながら、こういった口利きのような行為には、以下のような問題点があります。

・市民に対して公平・公正な職員採用が行われていないとの疑念を抱かせる可能性がある

・渦中の受験生本人は裏で大人が動いていることを知らないこともあり、その場合、本人の意に反して「コネを利用した人物である」との疑いを掛けられてしまう

・人事課職員は議員への忖度から、当該受験生を不採用にする際には余計な検討が生じたり、議員への説明資料の作成を強いられたりと、不必要な業務や過大なストレスが生じている

 

公平かつ公正な採用試験が行われ、優秀な職員を採用し、ひいては○○市の発展に繋げたいとの想いは、議員も職員も同じだと思います。

今後は、例え悪意がなかったとしても、このような疑義の生じるような行為は慎んでいただきますよう、心からお願い申し上げます。

 

失礼を顧みず、勝手なことを申し上げましたこと、心からお詫び申し上げます。

末筆ながら、益々のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。

 

なぜ自治体名を明かさないのか

この記事を見た方の中には、「それなら自治体名を公表すべきではないか」との疑問を持つ方もいるかと思います。

実際、私自身も自治体名を公表するか悩みましたが、公表しないことにした理由が2点あります。

・役所の不正を指摘したいわけではない

・1つの自治体だけの問題で終わらせたくない

順に説明します。

 

役所の不正を指摘したいわけではない

私の議員へのメール内容で記載した通りですが、議員や地元の有力者から口利きがあったとしても、それをもって役所が不正な採用を行うことは難しいです。

実際に私が採用担当をしていた際も、このような口利きは何件もありましたが、それによって点数を操作するようなことはありませんでしたし、無駄な仕事が発生したり余計な気苦労を背負わされるという意味では、役所側はむしろ被害者側だと思っています。

私はお世話になった自治体に迷惑をかけたくないですし、これからも優秀な方に採用試験を受けてもらって、市を発展させてほしいと願っています。

今回、私が自治体名を公表することでその自治体の印象は悪くなるでしょうし、数名の良識を欠く議員や有力者のためにそのような事態を招くことは本意ではありません。

 

1つの自治体だけの問題で終わらせたくない

私がいた市役所だけでも、このような事案が年に数件もあったので、正直、この問題は全国の自治体や国においても起こっていると考えています。

現に、他都市の人事課に務めている方に聞いたところ、同様の口利きのようなことはあるようですし、何なら私がいた市にも、市議会議員だけでなく「国会議員」や「県議会議員」からも口利きの連絡が入ったこともあるので、同様の事例が山のようにあるのはまず間違いないでしょう。

私が自治体名を公表して「○○市でそんなことがあったんだね」という話で終わらせずに、あらゆる市町村、都道府県、国においても起こりうる大きな問題だと知ってもらいたいのです。

 

皆さんに協力していただきたいこと

ここまで読んで、「これは許せない。この問題を解決するために何か協力したい。」と思っていただけた方は、お住いの自治体の県議会議員や市議会議員、あるいは国会議員に対して、以下の内容のメッセージを送っていただきたいです。

基本的に議員は市民や国民からの意見を受け付けるためにネット上でメールアドレスを公開していたり、それがなくてもFacebookなどのSNSを通じてもメッセージを送ることができると思います。

できれば普段の活動から誠実に対応してもらえそうな議員にメッセージを送るか、あるいは議会の「目安箱」のようなお問合せフォームでもいいですね。

(メッセージ案)

公務員の採用試験にまつわる「議員からの口利き」に関してです。

一部の議員から採用担当部署に「知り合いの受験生を採用させるように」との口利きがあるのではないか、ということがSNS等で話題になっていますが、これは事実でしょうか。

もし事実であれば、法律で定められる「受験成績その他の能力の実証に基づいて行わなければならない」との規定、すわなち公平かつ公正な採用をすべきという「成績主義」の理念に反しています。

このようなことは決してあってはならないので、全議員への聞き取りを行っていただくとともに、間違ってもこのような事案が発生しないよう、周知・徹底をよろしくお願い申し上げます。

みたいな感じでお願いします。

「さすがにここまでできないよ」という方でも、この記事を広めてもらえたり、この記事を載せたツイートをリツイートしていただけたりすると、この話題が全国の議員の耳に届いて、少しでも抑止力になるかと思いますので、是非ともご協力をお願いします。

 

さいごに

今回は僕の想いが強すぎて長くなってしまってすみません。

でも役所で経験した仕事の中で一番許せなかったことなので、批判も承知で書くことにしました。

 

誤解がないように言っておくと、僕は間接民主主義や議会制度そのものを批判するつもりはありません。

しかしその一方で、霞が関の働き方改革が進まないことでも問題視されるように、議会が行政に対して力を持ちすぎているだろうとは感じています。

行政と議会はお互いに牽制関係であるべきはずが、議会が行政よりも上の立場にあって、理不尽なことまで言いたい放題、やりたい放題になってしまっている気がしてなりません。

 

最後に、これから公務員を目指す方にとっては、少し不安を与えてしまったことは申し訳ありません。

そこは注意して書いたつもりですが、そのような外圧があっても役所の採用試験は適正に運用されているはずですので、気兼ねなく受験してください。

記事の中で議員に対してメッセージを送るようお願いしましたが、それは大人たちに任せておいてもらえれば大丈夫ですので、皆さんは気を取り直して勉強に戻ってもらえたらと思います。

 

今回の記事を読んで「なーんだ、議員からの口利きなんてイメージ通りで面白くない」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、だとするとそのこと事態が相当ヤバいです。

だって議員は皆さんが選挙で選んだ皆さんの「代表者」なんですから、皆さん自身が税金から給料をもらいながら、税金で給料をもらう公務員の採用のことで不正をしようとしていることを許さないで欲しいです。

僕の発信を通じてちょっとでも波風が経つことで、少しでも役所が健全化されて、社会がより良くなることを祈っています。

 

それでは、また。

 

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